「ハヤトくんねむそう」
「ねむたい」

とろんとした目をこっちに向けて、ふああ、とあくびをしたハヤトくん。
あっ、そんなに擦ったら赤くなっちゃうよ、明日充血してたら大変だ。

「もうむり〜」
「えーっ、先に寝ててもいいよ?」
「それはいやー!」

私を背中からぎゅうっと抱きしめながらスリスリしてくる。ハヤトくんは眠くなるとだいたいこれをする。ちょっとだけ体重がかかって、重みが心地よい。

「でも…まだ私この楽譜書き終えちゃわないと…」
「えーいいよーそんなのーはやくねようよー」
「よ…よくないよ…明日までにやってくるってトキヤくんに言っちゃったし」
「いいよーどーせトキヤーでしょーいいよもうーねむいよー」
「だから先に寝ててもい、」
「一緒がいいのー!」

まるで我が儘な子どものようだ。お菓子を買ってくれないと店頭で泣き出すアレにそっくり。

「もお…とりあえず離して」
「そしたらどうなるの?」
「あと20分ぐらいで終わるから、ハイここに座って、ホラこのクッション代わりに抱きしめて」
「えー」
「ちゃんと待ってたらちゅうしてあげる」
「わかった」

なんて扱いやすい。

18分後に楽譜を書き終えて顔を上げると、隣にいるハヤトくんはすやすやと眠っていた。どうりで静かだったはずだ。

「ハヤトくーん、風邪引いちゃうよ〜?お布団いこう〜」

ゆすってみると、ちょっとずつ夢の淵から覚醒してくるハヤトくん。

「ん……おわったの…?」
「おわったよ〜おまたせ、さあほら、お布団いこう」
「うん〜(むぎゅ)」
「ちょ…動けないよ!」
「つーれてってー」
「ムリにきまってるでしょ!」
「だよねえ〜よっこらせっ…」

気合いを入れて立ち上がったハヤトくんが私の手を引いてベッドルームまで誘導される。明日は私もハヤトくんもオフ、きっとお昼まで寝てるんだろうなあ。



寝息のワルツ




翌日、楽譜をとりにきたトキヤくんとの雑談中に目覚めたハヤトくんが、自分のものだと言わんばかりに私を後からぎゅっとし続けていたのは言うまでもない。






 

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