クリスマスがどうした。ボクは仕事だ!
イブも当日も仕事だらけのボクは大きな疲労感と倦怠感に潰されそうになっていた。確かにこんな大切な日にお仕事を貰えるのはアイドルにとって幸せ以外のなにものでもない。でも、だけど、しかし、but。ボクにはそれよりも大切な人がいることを忘れられちゃ困る。いや、彼女のことは誰にも言ってないから仕方がないけど。それに例えボクに恋人がいることが公になっても、じゃあクリスマスは休みをあげよう、だなんてことになるはずないのだ。

そろそろ25日は終わりを迎える。ボクは携帯の小さい時計を見ながら足を忙しく動かしていた。つい30分前にスタジオを飛び出して、地下鉄に乗って、下車して、今はの家まで早歩き。23:55という数字の並びはボクを焦らすばかりだ。彼女の家まではここからだと約5分。ボクが早いか、それとも26日が早いか。負けるわけにはいかない。

必死の思いで58分にの家のインターフォンを押すことに成功した。

(…あれ?)

しかし返事はない。まさか、友達の家にクリスマスパーティーをしに行ったとか?実家に帰省したとか?いやいやそういうことがあるときは必ず一言言ってくるはずだ。楽しそうに自慢げに。
59分。やばい。ボクはの携帯に電話した。コールが7回続いたところで通話が開始される。

「もしも…」
「いまどこ!?」
「どこって…家だけど…」
「え、いまボク玄関の前にいるんだけど!呼び鈴鳴らしたんだけど!っていうか…あああああ!!」
「!?ちょっ…ハヤトくんうるさい…」
「ばかあ…」
「え?」
「とにかく開けて…」

通話オフのボタンを押した。ボクは自分の腕時計と携帯の時計を交互に見てため息を漏らすしかない。なんてことだろう。00:01。

「ハヤトくんどうし…」
「………」
「わ、泣きそう」
「泣いちゃう」
「よしよし…ごめんね、うとうと寝ちゃって…」
「クリスマスおわっちゃったよ…」

ぎゅっとをだきしめて小さく言うと、ごめんねと返された。はクリスマスなんかどうでもいいみたいにボクをなぐさめる。

「とりあえずやばいから部屋に入って」
「うー…」
「ケーキは買ってあるよHAYATOくんと食べようと思って」
「だいすき!!」

玄関に足を踏み入れながら、彼女の後ろ姿に抱き着いた。苦しいよ、なんて抗議は受付けないよ。


イエスの使い魔




ボクたちのクリスマスはこれからだからね!






 

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