みんな聞いて!今日の記念すべきホワイトデー、なんとハヤトとオフが重なりました!
奇跡すぎる!
…なんて、はしゃいでいたのは1時間前まで。
ハヤトが私の部屋にたどり着いたと思えば、深刻な顔をして「急にお仕事入っちゃった…」と暗い声音で言いました。私の部屋に来るまでにマネージャーから電話がきたらしい。
まあ仕方がない。こういうことが今までにもなかったわけじゃないのだ。
「ごめんねちゃん…」
「大丈夫だよ!気にしないで!こういうのはお互い様だから…それに誕生日じゃなかっただけまだマシだよ!」
「うん…じゃあ行ってくるね…」
「うん、行ってらっしゃい」
申し訳なさそうに私に口づけて、ハヤトはダッシュで走って行ってしまった。
…あーあ。今日はなにしよ。ほんとはハヤトと変装して買い物行って、何か見繕ってもらう約束だったんだけどなあ。
なんて、考えていても仕方がない。今日はのんびり過ごそう。
「…、………ちゃん!」
「はいっ!!?」
突然視界にハヤトが出てきた。何事?ハヤトは今日は仕事が入ったんじゃ…?というか私、のんびりしすぎてソファで寝ちゃってたのか。
外からは西日が差し込んでいた。夕方だ。
ハヤトは肩で大きく息をしながら、脱力したように私が転がっているソファにもたれかかっている。
「…ハヤト?」
「撮影だったんだけど」
「うん」
「すごいよ!最短記録!たくさんカット数あったのに、ってカメラマンさんもびっくりしてたんだよ!ちゃん褒めて!」
「ふふ。はいはいわかったわかった!偉かったね」
「えへへ〜」
ふにゃりと笑うハヤトに、私もつられて顔が緩むのがわかる。
「私のために急いでくれたんだね」
「ちがうよ、ボクが早くちゃんに会いたかったからだよ」
「うん、でもありがとう」
なんだか愛されてるなあ。ハヤトはたまに、こういう肝心なところを人に気を使ってオブラートに包むことがある。私のためだなんて言ったら、きっと私が罪悪感を感じてしまうと思ったんだろう。そういうところ、意外と気を遣えるんだよね。
「それとね……はい、これ」
「えっ」
「開けてみて」
綺麗に包装されたラッピング。リボンをひもといて箱をあけると、小さな星をモチーフにした、オシャレなピンクゴールドのネックレスがあった。
思わずハヤトの方を見ると、にっこりして私より嬉しそう。
「この間、取材でアクセサリーショップに行ったんだ。そしたら、このネックレスすごくちゃんに似合うなって思って。今日、ほんとは一緒にお買い物行ったときに、このネックレスをちゃんに合わせてみたかったんだ。でも、できなかったから…買ってきちゃった」
少し困ったように笑いながら、私の様子を伺うハヤト。私の手の平の上でキラキラ輝くそのネックレスは、この上なく私の好みだった。ハヤトすごい。
「…ハヤト、つけてくれる?」
「!」
「だめかな?」
「つ、つける!」
ぱあっと明るくなった表情。ハヤトは私の手の平からネックレスをゆっくり取ると、器用に金具を外して私にネックレスをつけてくれた。
「どう?」
「す、すごく似合ってる」
「えっ…なんで泣くの!?」
「だ、だだだって、ちゃんが可愛いんだもん!」
ぎゅうっと抱きしめられて、窒息しそうになる。でもすごく嬉しくて、幸せで、このまま窒息して死んでしまってもいいかな、と思った。
「ハヤト、ありがとう。すごく幸せだよ…こんなふうにハヤトからプレゼント貰えるなんて、思ってなかった」
「喜んでもらえてよかった…。もしいらないなんて言われたらどうしようかと…」
「いらないわけないよ…大切にするね」
ハヤトの頬に、チュッと音をつけてキスをすると、たまらなく嬉しそうな顔をしてガバッと覆いかぶさってくる。
その重みが心地好くてぎゅっと抱きしめると、ハヤトが大好き、と耳元で囁いた。
私も、いつも大好きをくれるあなたが、たまらなく大好きだよ。
愛が溢れていく
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