R-15ぐらいですご注意を。






私は処女だ。生まれてから先日で20周年を迎えたけれど、処女である。
レンや翔からは「経験豊富そう」とレッテルを貼られていたようだが、本当にセックスなんてしたことがない。ましてや、恋人すらトキヤが初めてなのだ。

「…、すみません」
「いや、みんなから言われるから…」
「しかし……すみません…」

事務所の寮の、トキヤの部屋。たまたまそんな話になった。さも私にセックスの経験があるように言われたので、自分には経験がないと言えば彼はハッとした後に平謝りの一方。そう言われることには半ば慣れているが、確かに恋人にまでそう言われてしまうのは少し悲しいものである。

「…でも大丈夫です、私も童貞ですから」
「え、うっそだぁ」
「本当です」

トキヤがあまりにも真面目な顔で言うから、信じるしかない。しかし彼も意外だ。経験がありそうな感じがしていた。
だからこそ、私の方からセックスの話を振れなかった。今回私たちがこんな話になったのは、トキヤのドラマの話がきっかけである。ベッドシーンというやつだ。

「…私たち、初めて同士だったんですね」
「そうだね、なんか気が抜けちゃった」
「私もですよ、てっきりは既に経験していると思ってましたから、どう切り出せばいいかと少し悩んでいました」

トキヤとは、半年前から付き合い始めた。早乙女学園にいた頃は、お互いに恋愛なんてしない主義だったから、勿論そんな感情なんて持ち合わせていなかった。
けれど学園を卒業し、無事に事務所に所属して1年が経ったとき、私たちはたまたまドラマて共演をすることになった。しかも恋人役だ。一夜限りの2時間ドラマだったので、長い期間の撮影をしていたわけではなかったが、私たちはあのときお互いに惹かれ合っていた。
そしてそれから半年が経ち、恋人という関係に至ったのだ。しかしキスやハグはするものの、セックスまで至ることはなかったので、さすがの私も少し気にはしていた。けれども、トキヤも悩んでいたとは意外である。彼は研究熱心であり、全ての事柄に対する対処法を知っている気がしていた。

「あなたは、その…私よりも年上ですし」
「たかが1歳だけどね…」
「それでも、その1年が私にとっては大きいんですよ。永遠に縮まることのない差なんです」
「大袈裟だよ」
「でも、本当にそうなんです」
「私からしてみれば、トキヤが年下だなんて思えないよ。年齢逆かな?って思っちゃう」

彼はすごく大人だ。私自身、自分が子供っぽいとは思っていないが、それでも彼に大人だと感じる一面が多々あることは確かである。それは日常生活においても、仕事においても、また恋愛においても。私が知らないことを、彼はたくさん知っている。

「それに、歳の差なんて心の距離で埋めちゃえばいいよ」
「…あなたらしいですね」

少し思い詰めた表情をしていたトキヤの顔が、ふわりとした微笑みに変わった。それが合図かのように、お互いに唇を重ねる。触れるだけのキスから深いものへと流れていき、いつの間にか私はトキヤに後頭部を支えられて腰に腕を回されていた。


「…ん、なに…?」
「セックス、しましょうか」



無知なケルビル



断る理由なんてないこと、もうあなただって知ってるくせに。




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